40代以降でよく所見が見つかる病気とは

若いときには心配していなかった病気のこと。でも、年齢を重ねるごとに、生活習慣病やがんのことなどが、気になってきますよね。 そんなときに受けておきたいのが、人間ドックです。検査項目の種類や数によって半日、1日、1泊2日などのコースが用意されていて、オプションで気になる検査だけを受けることもできます。でも、自分の年齢で今、どんな病気に気をつけたらいいのか、わかっている人はそう多くないでしょう。40代以降の人に、よく所見がみられる病気について、人間ドック専門クリニック「内幸町診療所」所長の遠藤素彦医師にお話をうかがいました。

40代、50代で注意したい「大腸がん」 厚生労働省の発表によると、がんは、昭和58年からずっと、死亡率第1位となっており、年間死亡者数は38万人を超える状況が続いています。なかでも、大腸がんでの死亡者数は、現在女性では第1位、男性では第2位となっており、増加傾向にあります。

どのような人が大腸がんになりやすいのでしょうか? 『肉を好んで食べる方、また喫煙も大きく影響していますね。喫煙は肺がんとの関係ではよく言われているので意外に思われるかもしれませんが、タバコを吸えば消化管にもタールが入り込むわけで、肺だけでなく食道、胃、すい臓、大腸などにも影響を及ぼすと言われています』 と遠藤先生。

早期発見のためには、毎年の健診で「便潜血検査」を受けることが大切だそうです。 『便潜血反応が陽性になった場合は、大腸の内視鏡検査を必ずお受けください』 と遠藤先生。

遠藤先生

今は、日帰りで簡単に検査ができるようになっています。良性のポリープでも、段階を踏んでがんに変容することがあるので、その前段階で芽をつむ、ということが大切だそうです。

脳ドックで一度は検査しておきたい「動脈瘤」 動脈瘤とは、動脈硬化(血管が硬くなること)、血管の炎症、血栓(血液が血管の中で凝固して塊になること)、塞栓(血栓、脂肪や空気など、なんらかの物質が血管中を塞ぐこと)、外傷、膠原病などの病気が原因で、動脈が弱くなって膨らんでしまうことです。進行すると、血圧が上昇した場合、ついには破裂して、大出血を引き起こす怖い病気です。身体のあらゆる場所の血管にできますが、脳にできた場合(脳動脈瘤)は、「脳出血」、または脳表面に出血が広がる「くも膜下出血」、を引き起こします。

『40歳以降では、動脈硬化による動脈瘤という場合が多いのですが、生まれつきの動脈瘤や動静脈奇形という場合もあります。これらは遺伝的な要素もある、と言われているんですよ。成人になるまでにゆっくり大きく成長しますので、脳ドックで一度調べておく、というのは大切ですね。とくに血圧が高めの方は注意が必要です』 と遠藤先生。

脳ドックでは、放射線を使うCTとは違い、磁石の力を借りて、体の断面図写真を撮るMRIで検査を行います。テスラとは、磁力の大きさをあらわす国際単位で、0.3~3.0テスラまであり、数値が大きいほど、質の高い画像を撮影することができます。内幸町診療所では、高性能のドイツ・シーメンス社製 3T(テスラ)MRI装置 MAGNETOM Spectra 224AABZX00032000を導入しています。

胸部レントゲンよりもCTでより詳しく調べられる「肺がん」 国立がん研究センターがん対策情報センター発表の、直近2014 年の、予測がん死亡者数では、肺がんは男性で第1位、女性でも第2位となっており、大腸がん同様に、早期発見が重要ながんです。

『肺がんは、みなさんご承知のとおり、一番の原因は喫煙です。心配な人は、胸部レントゲンだけでなく、一度CTで肺ドックを受けることをおすすめします。喫煙が原因といわれるもうひとつの病気は、肺気腫(肺が膨らんで呼吸が大変になってしまう病気)ですね。こちらは遺伝的な体質によっても左右されると言われています』

内幸町診療所では、高性能の高速マルチスライスCT撮影装置を導入し、「肺ドック」を実施しています。数十秒の息止めで胸部レントゲン写真では見にくい病変も、鮮明に映し出すことができます。

64マルチスライスCT装置

ドイツ・シーメンス社製 64マルチスライスCT装置 SOMATOM Perspective 224AABZX00016000

男性に多い「メタボリックシンドローム」 メタボリックシンドロームとは、お腹まわりの内臓に脂肪が蓄積した「内臓脂肪型肥満」(腹囲の基準は男性85cm以上、女性90cm以上)に加えて、高血糖、高血圧、脂質異常のうちいずれか2つ以上をあわせもった状態をいいます。

『ある限界を超えてしまうと、糖尿病や高血圧症、高脂血症といった生活習慣病を併発しやすくなってしまいます。女性よりも男性のほうが圧倒的に多いです。女性は内臓脂肪型ではなく皮下脂肪型が多いんですよね。ですから、基準とする腹囲も女性のほうが余裕をもたせた数字になっているんですよ。皮下脂肪はあまり悪さをしませんので』 と遠藤先生。

検査の結果から、腹囲があっても内臓脂肪が少ない人もいます。あくまでも腹囲は目安として、内臓脂肪CT検査を受けましょう。CTで内臓脂肪面積が100平方cm以上に相当した場合は注意が必要です。

遠藤素彦(えんどうもとひこ)医師

最近の人間ドック受診者の傾向とは? 『うちの診療所は企業が多い場所柄、いらっしゃる方は、ほとんどのみなさんがデスクワークですよね。パソコンの前に1日中座っているわけです。そのような方々を年々みていると、だいたい年に1kgぐらいずつ太っていく方が多いんです。みなさん長時間仕事をしていますから、帰ってから夜遅くに飲んで食べて、すぐに寝るわけです。運動したほうがいいのですが、新たに時間を作るのは難しいと思いますので、日々の習慣の中で工夫して、少しでも動くようにしてほしいです』

取材協力:遠藤素彦(えんどうもとひこ)医師
1978年東北大学医学部卒業 医学博士
日本内科学会総合内科専門医
日本消化器病学会消化器病専門医
内幸町診療所所長