受診適齢期、施設選びの基準と受けるべき項目

人間ドックを受けたら、健康だと思っていた人に病気が見つかった、自覚症状に気づいて病院で検査を受けたら、がんがかなり進行していた、そんなケースは決して珍しいものではありません。

身体のすみずみまで総合的な検査を行う人間ドックは、知らないうちに進行してしまう、がんや生活習慣病の予防、早期発見・治療につなげるものです。 では、人間ドックは「どこで」「どんな項目を」「何歳ごろ」に受診するのがいいのでしょう。人間ドックの特徴や選び方についてご紹介しましょう。

人間ドック:どんな検査があるの?

人間ドックは法定健診(雇用先などで受ける定期的な健康診断/注1)の検査項目よりも多くの項目が用意されています。健診にかける時間には、半日、1日、1泊2日などのコースがあり、時間を長くかければかけるほど、多くの項目について検査ができます。オプションとして設定されている項目もあり、ご自身の症状や前回の検査結果を参考に、特定の検査だけを申し込むことも可能です。

注1):事業主が実施することを法律で義務づけられている雇入時の健康診断、または定期健康診断などが一般健康診断にあたります(労働安全衛生規則第43~45、47条による)。

人間ドック:何歳から受けたらいい?

対象年齢は検査項目によって異なります。 女性の場合、子宮頸がん検診は20代後半から、乳がん検診は30代での受診が推奨されています。企業などの定期検診でもオプション設定されている場合があり、総合的な健診を受ける人間ドックの適齢は35歳以上、もしくは40歳以上が目安されていて、1年に1度の受診が理想です。

人間ドックの費用はどのくらい?

人間ドックを受診する施設やコース、オプションやサービスによって価格は異なります。以下の金額はおおよその目安です。

  • 半日 4~5万円
  • 1日 7~8万円
  • 1泊 10~12万円

人間ドックは全額自己負担ですが、加入する健康保険組合が補助制度を設けている場合があります。その場合、健康保険組合の指定医療機関で受診することになります。 病気で人材を失うことは企業にとっても痛手です。大企業だからといって補助が手厚いというわけではなく、それぞれの会社の「思い」によるところです。社員の健康を考える中小企業は数多く、人間ドックの自己負担分を会社で負担する(社員は費用を負担することなく人間ドックを受けられる)ケースもありますので、ご自身の会社の補助・助成金制度を確認してみてください。

人間ドック:どこで受けるの?選択の基準は?

人間ドックの実施機関であれば、総合病院や大学病院、クリニック、診療所などを自由に選んで受診できます。施設を選ぶ基準として「自宅や職場から通いやすい」「加入する健康保険組合の指定機関」といったものがありますが、ほかに基準となるものはあるのでしょうか。

学会が優良認定した施設を選ぶ、という選択

人間ドックを受診できる多くの健診施設は「日本総合健診医学会」か「日本人間ドック学会」に属しています。これらの組織では、人間ドック専門医制度を設けたり、健診業務従事者の技術向上、医療マナー向上のための仕組み作り、よりよい健診方法の研究などを行い、健診の制度を高める努力をしています。 日本総合健診医学会は実地検査の上、一定の基準を満たした施設を優良総合健診施設として「優良施設認定」マークを付与しています。更新期限までの間に幾度も査察を受けるといった徹底されたもので、限られた医療機関しか取得していません。(日本人間ドック学会の場合「機能評価認定」がそれにあたります)

下記のHPから認定施設の検索が可能です。さまざまな条件と照らし合わせ、ご自宅近くの人間ドックを探してみてはいかがでしょうか。

東京都千代田区「内幸町診療所」
<1日ドックコースの健診内容例>

・診察(既往歴、喫煙歴、自覚症状の有無などを聞きながらの医師の診察)
・身体計測(身長、体重、BMI=肥満度、腹囲の測定)
・感覚系の検査(視力、聴力の検査)
・眼圧検査(緑内障診断の指標など)
・眼底検査(高血圧、動脈硬化、糖尿病のほか目の病気の発見)
・血圧測定 ・尿検査(尿蛋白や尿糖の有無、腎臓や泌尿器の疾患)
・便潜血検査(ポリープ、大腸がんなど)
・血液検査(貧血、肝機能、腎機能、コレステロール、中性脂肪、尿酸、糖の代謝障害、感染や炎症の有無など)
・心電図検査(心筋の障害、不整脈など)
・肺機能検査 ・腹部エコー検査(肝臓、胆のう、腎臓、すい臓、ひ臓の腫瘍や結石など)
・胸部エックス線検査(肺がん、肺結核、心臓や大動脈の異常など)
・胃バリウム検査(食道、胃、十二指腸の異常など。内視鏡検査に変更も可能)

<1泊ドックコースの健診内容例 1日ドックに以下をプラス>
・糖負荷試験(ブドウ糖を飲み、1,2時間後の血糖・尿糖パターンから糖尿病の有無を検査)
・負荷心電図(2段の階段昇降運動で心臓に負荷をかけて行う心電図検査)
・直腸指診(ポリープ、大腸がん、男性は前立腺の疾患などを検査)
・喀痰検査(喀痰を採取して肺がんを検査)

<オプション検査>
・頭部MRI・MRA検査(X線ではなく、強い磁場により頭蓋内の断面を画像化して検査。脳卒中の予防・早期発見に有効)
・頸部MRI・MRA検査(X線ではなく、強い磁場により頸部の断面を画像化して検査。動脈硬化の予防・早期発見に有効)
・胸部CT(X線装置で肺の横断面を画像化して検査。肺がん、肺気腫など)

<女性専用オプション コースに含まれる場合もあり>
・子宮頸がん検診(内診/子宮頸部細胞診/経膣エコー検査/HPV検査=ヒトパピローマウイルスの感染を調べます)
・乳がん検診(マンモグラフィ検査=乳房専用のレントゲン検査/乳房エコー検査)

取材協力:内幸町診療所